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人として闘うとは?現代日本の最恐の治外法権社会『学校』において、他者への迫害とそれと闘う者たちの物語。

  • 投稿者: 柿崎   [2022年 08月 28日 14時 17分 ()]
この作品には剣も魔法もない。魔王も怪獣もいない。
しかし現代日本で最も恐ろしいスクールカースト問題を真正面から取り上げた。この問題の真に恐ろしいのは、昨日まで友人だと思っていた相手が突然自分を迫害してくることだ。
学校という閉鎖社会において各人が小さなグループを作るのは自然だが、それが校内のあらゆる力関係にまで影響を及ぼすようになると異常事態だ。それこそ他者をスケープゴートにして楽しむようなゲスは枚挙に暇がない。
主人公喜多見は虐め被害者を救うが、それを面白く思わない加害者側が被害者に裏切りを唆す。それも脅迫付きで。そこから話はスタートする。
確たる証拠が無くとも被害者が主張しているのだから喜多見が加害者で間違いない。→従って自分たちは喜多見を迫害しても構わない。とこんな風に自分たちに都合のよいストーリーを作り上げて喜多見を迫害する同級生に対し、当初は一人を選んだ喜多見が遂に闘いを始める!

心の悲鳴が聞こえて来る

イジメ自殺が騒がれている昨今、この作品に出てくる少年少女達の声に出てこない声、内側から溢れ決壊したような心情がとても丁寧に描かれています。

大人の立場から見ると「成長途中の子供が〜」などとご高説を宣うのでしょうけどもそれは「大人として見守る側に相応のスキル」が無ければ成り立ちません。
問題が起きた時、「その時何があったのか」ではなく「その時どんな気持ちだったのか」を渾身の力で表現されていました。

心に傷のある人達へ特にお勧めします
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