イチオシレビュー一覧

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「魔女」というアンティーク

魔女や異世界は、もはや使い古された、手垢まみれのジャンルだというのが個人的な考えでした。しかしまだ、こんな世界観があるのかと驚かされました。本作では「魔法使い」と「魔女」の境目が明確であり、かつ魔女たちの設定はディストピア的で、妖しく魅力的。
恋物語の裏にある、混沌とした、暗く儚い希望を描いています。登場人物たちの過去は、主人公以外あまり掘り下げられてはいませんが、台詞などから滲み出る闇の深さを勝手に想像してしまい、思索の妙に耽るのもまた面白いです。そのお陰でテンポは非常に良く、短めに完結させているのが上手いなと感じました。
主人公たちに共感することはおそらく出来ません。しかしながら、そのために、まるで一枚の絵を眺めているかのような雰囲気を味わうことができます。読者を選びますが、好みに合う人にはバッチリと合う、そんな物語でしょう。
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