イチオシレビュー一覧

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戦後の傷痕をえぐり出したヒューマンドラマ

  • 投稿者: 中今透   [2023年 04月 15日 16時 53分]
帝共戦争にて、戦争犯罪の結果として生まれたユミン。
母が帝国兵に犯されたことで生まれた彼女は『鬼畜の子』として忌み嫌われる。
帝国への憎悪がユミンを追い詰め、それは、父への復讐へと駆り立てる。

戦争犯罪を、被害者と加害者の双方の視点から描き、濃密な人間ドラマに仕立て上げている。
更には、その結果として生まれたユミンが、共和国人からの憎悪に晒されながら、何を想い、何を考え生きているのかが、鮮明に描かれている。

暗澹たる設定だが、それだけではない。
ユミンが出会ったチャグとその一家との関係、ユミンが終盤に会うことになる父との関係。
残酷な世界の中で、チャグとの出会いはユミンの中で救いとなり、父への感情は物語が進むにつれて、憎悪という言葉だけでは説明できないほど複雑なものになる。

戦争犯罪の中にある、人の心の複雑さを見事に書ききった本作は、是非、オススメしたい一作である。

憎しみの連鎖が招いた暗闇の中に、一筋の光が差し込む人間ドラマ

  • 投稿者: 木立 花音   [2021年 09月 20日 21時 32分 ()]
 二つの国が血で血を洗う戦いを繰り広げた帝共戦争。その中で、帝国人から犯された現地女性から生まれた主人公、ユリンは、村の人々を虐殺した敵の子として虐げられる日々を送っていた。
 彼女は、自身の穢れた血を洗うため、顔も名前も知らない父を探し出して、殺すことを決意するのですが──。
 
『戦争の悲惨さ』
『いじめ』
『国家間の賠償問題』
 そんな重いテーマですが、本作は真向勝負で表現しています。
 
 物語がたどる結末は、復讐の成功か、失敗か。いずれにしても、主人公には罪人となる未来しかありません。
 ですが、憎しみの連鎖が生み出したどん底の中に、一筋の光が差し込むのです。
 そこから訪れる展開に胸を打たれ、久々にウェブ小説で温かい涙を流すことができました。
 人間が本来持っているはずの「優しさ」が、重いテーマの中垣間見えるヒューマンドラマ。
 結末はぜひあなたの目で、確認してください。

レビューのなんたるかを知らない全く芽の出ない中年なろう作家の目線でダイジェストをしてみる。7まで読んでます。

  • 投稿者: 雷然   [2021年 07月 16日 11時 43分]
 戦後の舞台。物語は石碑から始まる。石碑には碑文が書いてある、「巧い手だ」私は唸った。
 世界観は序盤で説明しておきたい。だから最初に説明をダラダラと書いてしまう。よくある失敗だ。説明文があると読者は読む気力をなくしてしまう。しかし石碑に書いてある文面を紹介するという形ならば導入として悪くない。
 主人公、少女。リアリティのあるイジメの描写、軽い物語を見ようとする読者はここで脱落する。
 絵本が主人公に、そして読者に物語の方向性を示す。凄くシンプルな形で。『父親を殺す』
 暗いエンディングが(仮)で私の脳内で表示され、すぐに新たな人物と出会う。歳の近い友人、男。
 彼が暗い物語の中で小さな光りになってくれる。私(読者)はホっとする。
 主人公は行動する。即ち物語は進む。
 母の苦しみ、人の優しさ、帝国兵の悪逆と人間らしい優しさ。人の優しさが主人公の孤独をより強く映す。
 文字数制限。
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