イチオシレビュー一覧

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共感性が欠落した、愛を求める「寄生獣」

  • 投稿者: ゴロリ   [2021年 10月 08日 02時 58分]
ショゴスは、元人間の記憶を保持し、クトゥルフの怪異に転生した存在である。人間の頃のトラウマで、病的に人間の愛を求めるが、一方で人間は捕食対象である。当然、まっとうな精神性を保っているはずもなく、共感性が欠落している。

彼は捕食した人間の姿に擬態して、その人間の人間関係をそのまま奪い取り、なりすまそうとする。だが、姿形は似せれても、根本的に共感性が欠落しているため、何度もボロを出してしまう。

ショゴス転生は、そんな試行錯誤を繰り返しながら、自分を愛してくれる人間を求め、捕食し、成長していく狂気の物語だ。

私は、名作漫画[寄生獣」に出てきた、田村玲子が、人に擬態しながら子どもを宿す話を思い出した。彼女は研究的な視点で人間の理解を試みるが、ショゴスは愛されたいという衝動が重すぎ、知能も低いので、何につけても失敗してしまう。それが、凄惨なはずなのに滑稽に見えてしまうのが、とても面白い。

奇怪で魅力的な存在ショゴス

  • 投稿者: 退会済み   [2021年 09月 18日 16時 54分]
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孤独死した男は化け物として異世界転生する。その姿形から、自らをラヴクラフト著「恐怖の山脈にて」に登場するショゴスと名乗る。

人間であった頃に持ち合わせていた道徳心は失せ、愛されることだけを希求するショゴス。愛を得るために手段を選ばない。
そう、本当に手段を選ばないのだ。

愛を求められた相手にとっては不条理極まりない行為も、ショゴスにはとっては、魚を刺身にしようとおろしたら、ぐちゃぐちゃになったからツミレにしました、程度の行為。
我々もうまく魚が捌けなければ調理法を変えるが、そんな感覚でショゴスは愛を求め試行錯誤を繰り返す。

まさに怪物。
ショゴスを怪物とたらしめるのは、人間であったときのささやかな希望。本当に恐ろしいのは人間かもしれない。

"ありふれた"そんな評価の対極にある作品だ

  • 投稿者: やとぎ   [2021年 08月 14日 22時 07分]
 異世界転生、もはやこの「小説家になろう」というサイトにおいて異世界転生のジャンルを抜きに語ることは出来ない。
 このショゴス転生もそんな異世界転生に分類される作品だ。

 だが、この作品が他とは明らかにテイストが違う。否、違いすぎる。

 この主人公は孤独死した後にショゴスという生物に転生する。人間の記憶を持ったショゴスは前世のトラウマから、孤独を病的に恐れるようになっている。
 孤独を恐れるショゴスは、自分を愛してくれる者を探すために行動を開始するが、それは大きな悲劇、災厄を撒き散らすことになる。

 人間の記憶を持った怪物、あるいは怪物となった人間、愛を求める故に悲劇を撒き散らすショゴスの結末は?

 万人受けはしない作品かも知れない。しかし、少なくとも私はこのような歪な主人公が何をするのか興味が尽きない。“ありふれた"という評価の対極にある作品だ。
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