イチオシレビュー一覧

　周囲の影響もあり、森でのサバイバル生活が好きな貴族の娘、少女アティは狩った獲物の肉を森で焼いてました。調味料で味付けした肉、この描写だけで読者は胃袋を持っていかれるでしょう。
　しかし、持って行かれたのは、謎の少年でした。外装こそ汚れはあるものの身綺麗でうだつの上がらない少年をアティは、彼が王宮での派閥争いが嫌で、平民生活を望んでいると知り、平民生活なめんじゃねぇ！　と、ばかりに激怒します！
　そこからアティ軍曹の愛の鞭が見ものです。初期から片鱗を見せていた「こふる節」が徐々に大きくなってきます。でも本当に愛があるんです。相手に舐められないための怒声に罵声、身体を鍛えることの大切さ、休めることの大切さや息抜きのことなど、拾われた少年にもアティにも実に深い一週間となりました。
　やがて再会する二人。どこか読み手まで懐かしい気持ちにさせてくる終わり方はさすがです。

きびきびとした文章と起承転結の手本にできそうな構成で書かれています…が、爆笑なしには読めない物語です。

主人公はアウトドア生活を習熟している辺境伯のお嬢様と気弱な余り王宮から遠ざけられた王子様。

仕留めた獲物で焼き肉を楽しんでいた彼女はお供たちからはぐれしまってお腹を空かせている彼と出会います。
嚙み合っていないようで噛み合っている二人の会話が最高に笑えます。とくに『このクソ野郎！』のくだり。

うっそー！と読む側が叫びたくなってしまう新兵訓練がこれまた笑えます。
この訓練を経て王子様の王宮への戻り際のプロポーズの様子は二人とも大真面目なのですがどうしても笑いが暴発します。
彼が王宮で自分の居場所を取り戻す様子もやっぱり可笑しくて。

ランキング１位になってから読みましたが、こういう作品を見つけて押し上げる読者諸兄姉の見る目の確かさに敬意を表します。

どストレートに腹の底から「最高だ！！！！！」と思えるお話でした。

何故か森の中で焼肉を焼いていた幼い女の子が、同じく何故か森の中にいた幼い王子様に出会い、ワイルドな方向にませた彼女が間違った知識(大人達にからかわれて覚えちゃった知識)で王子様にブートキャンプします。

これがまたなんとも子供らしい可愛い訓練で…！！
しかし、大人から見ればただの遊びでも、本人達にとっては本気。

もう子供時代に戻れない自分には微笑ましくも眩しくもあり、心が熱くなりました。
これが「尊い」ってやつですか…

短編なのであっという間に読み終えてしまって寂しいですが、肌寒くなってきた季節にピッタリな心温まるお話でした。

私はあと３回は読みます。