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日常のほんの1コマに隠された気持ち

  • 投稿者: burazu   [2021年 11月 06日 21時 07分]
今回レビューを書かせていただきます。

この話の主人公は移動教室が嫌いなんです。

というのも移動教室時に周りの視線が気になるというとても繊細な子です。

この瞬間だけがすごく苦痛というのは誰でもある事だと思います。人にとっては一見大したことでなくても本人にとっては相当な苦痛を感じていることもままあります。

少しでも苦痛が和らげるような方法があればと思います。

こんな日常、あるよね?

教室移動。ただ移動するだけ。だけど、それが辛い。
すれ違いざま耳に入るのは、誰かの何気ないささやき。
他愛のない笑い声。

今、もしかして、自分のこと話してる?

思わず、そう身構えてしまう主人公。

そんな孤独で切ない、何とも言えない複雑な感情に、
思わず「わかる!」と共感しちゃう方も多いのでは。

でも。

「気配が、話し声が、笑い声が、全てが自分に向けられているような錯覚」に陥りながらも、「ただの自意識過剰」と自分に言い聞かせ、押しつぶされそうな気持ちの中、「平気」に見えるよう、頑張る。

踏ん張る気持ちの表現が、何とも言えず秀逸で。
心の中をのぞかれたくないだろう主人公を、つい応援したくなる、そんな作品。

そのあまりに微細な心情世界の描写が、1,085文字で表されていて。
私は思わず唸ってしまったのでした。
ぜひ、ご一読を。そして主人公に、優しいエールを。
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