イチオシレビュー一覧

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短歌に込めた想いを解いてはいけない

思えば、短歌は奇妙なものである。
己の想いを美しい風景に重ねて、31文字の中に表現する。制限があるが故の美しさを醸し出す一方で、込められた情報は圧縮され読み解くのには技量が必要。

表面的な内容を読むだけでは、その真意を推し量ることはできない。
そして、作中に出てきた叔母の読んだ歌の真意を、決して解いてはいけないのだろう。

既に故人となっている夫婦の、外からは見えない関係性を探る話。理想的な夫婦。双方共に人間的にできているという描写がされる中で、しかし当人にしかわからない想いも見えてくる。

短歌をより深く紐解けば、わかるのだろう。しかしそれはお勧めできない。
何もしなければ、字面だけ読んだ短歌と同じく、美しいままの夫婦がそこにあるのだから。

当人にしか分からない悲哀

  • 投稿者: 鋏池 穏美   [2023年 12月 10日 08時 22分]
これは当人に確認しなければ分からないことではあるのですが、叔父の愛していたものは……

そうなると、作中で引用されている【若宮年魚麿】【本居宣長】の歌から感じられる背景も変わってきます

私が拝読した限りでは、相手は桜だとは思うのですがタイトルからも分かる通り、坂口安吾の存在も見え隠れ

果たして孤独だったのは叔母なのか叔父なのか……

私の理解力不足のために、はっきりとは断言できませんが──

とても素敵な物語をありがとうございます

一言で表現するなら巧い!

  • 投稿者: 神崎 ライ   [2023年 10月 28日 00時 41分]
和歌と夫婦の関係性……味わいが深いです。
最初に出てくる歌を何度読み返したことか……叔母の叔父に対する愛情が伝わるとともにどこか寂しさを感じる……

そして、叔父の不可解な行動や主人公の苦悩と後悔……まるでその場に立ち会っているかのような臨場感あふれる描写。

読み返したところで行きついたことは「巧い」
まだまだ理解が足りていないのか、更なる深みが隠されているように思います。
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