イチオシレビュー一覧

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声が思い出をよみがえらせる。

孝行したい時に親はなしとはよく言ったもので。
昔から使い古されたその言葉を実感するのは、やはりその時なのでしょう。

あの時は散々うっとうしいとか、邪魔ばかりするとか、それこそ、ウザい○ねなんてことを、ろくに考えもせずに発して、牙をむいて。

でも、いなくなって初めて気が付くんですよ。

そんなことを言える相手がいたってことに。

そんなことを言っても、関係が切れない相手だったってことに。

それに甘えて、そんなバカなことを言ったりもしたなと、あとになってから後悔したりもするんでしょうね。

カセットテープに紛れ込んだ「声」に、ここまで心を揺さぶられるとは、当時は思いもしなかったでしょう。

あなたは、大切な人の「声」を、ちゃんと録っておいていますか?

この作品を読んで、もう一度、大切な人のことを、考えてみませんか?

大切な思い出は「声」に

1000文字に満たない短編ながら、起承転結の穏やかな流れが良い味を出している名作です。

読み終えて、じーんと染み入るような静かな感動に包まれました。

主人公の子供の頃の小さな反抗心。
大人になってから気づくこと。
これらは多くの人にとって覚えのあることだと思います。

人はいずれ亡くなり、会えなくなってしまうもの。
そのときに最初に忘れてしまうのが「声」。
すでに実感している方もいるのではないでしょうか。

いずれ来るいつかの為に、何らかの形で声を遺したいなと思いました。

再生できる形で残された思い出は、貴方の大切な人の心を救う大切な光になるかもしれません。

見事な構成で描かれる、穏やかで温かな感動。
是非、読んでみてください。
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