イチオシレビュー一覧

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美味しい料理を作るように。丁寧に万全に。奴らを狙いそして討て

 如何なる言葉で想いを伝えるのか。残念ながら便利屋の彼にできることは実際のところ殺ししかない。痛覚を保持したまま戦う技術があっても恋文運びには役立たず。父はそれでもなぜか母とラブラブだった。二人とも奴等に殺されたが。

 地獄は今や現世にある。鬼か神か異能者が跋扈する地上で特化と呼ばれる能力がないものは殺されるのみだ。

 その地獄の中で特化を使えない彼は準備する。敵を調べる。敵の穴をつく。そして一縷の望みを。
 どんなに準備しても奴等を殺すには足りない。臆病に。冷静に。冷徹に。

 たとえ離れていても想い合う家族のように愛のように。奴等を知れ。

 君はそれをまだ知りたくないだろう。だからこそ、いつか。世界を解き明かせ。

 できることは殺すだけ。君に教えられることも殺すことだけ。
 殺しも愛も叙述トリックのように丁寧に。これは英雄譚よりも確かな物語。

痛快王道異能バトル

  • 投稿者: 合ノ介   [2021年 12月 10日 13時 29分]
 黒森裂は、異能力者が跋扈する世界で生きる、しがない殺し屋。彼は異能力、「特化」を持たない。だから、工夫を凝らし、頭を使い、時に姑息な手を用いて敵を倒す。そんな物語です。

 この作品の長所を挙げるとしたら、比較的短い作品の中にも関わらず綿密に伏線が張られていることが長所と呼べるでしょう。糸の結び目がスルスル解けるかのように伏線が回収される様子は、まさに爽快。それでいてテンポがよく、読みやすい作りです。

 読了まで決して長い時間はかかりません。それでいて十分な満足感。少しばかり時間が空いているそこの貴方。この作品、手にとってみてはどうでしょうか。
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