イチオシレビュー一覧

　これは、とある小児病棟で繰り広げられるヒューマンドラマです。
　もう時期退院する主人公の『にっちゃん』。彼女との別れを惜しむ他の子供たち。

　病棟という独特な舞台での人間関係が描かれ、子供たちの繊細な感情がヒシヒシと伝わってくる作品です。
　面白いです。ぜひご一読――いいえ、全て読み終えたら、もう一度読み返してください。

　一度目と二度目、絶対印象が変わりますから。

2回読むと印象が変わる。
そう書くと身構えてしまうかもしれないが、一度目はリラックスして何も考えずに読んでほしい。
叙述トリックとかではなく、丁寧に伏線や布石を張り巡らせるタイプの小説です。

病棟という特異的な空間。
そこで繰り広げられる子供たちの人間ドラマ。
儚くも強く生きようとする彼らの姿に胸をうたれる。

何故、タイトルの小児に「」がついているのか。
それは読めば分かると思います。

物語の舞台は「小児」病棟。
侵してはならぬ領域に足を踏み入れたとき、いったい何が起こるのか。
ぜひとも読んで確かめてほしい。

読者自身が、初見と二回目以降での感じ方が狂って自分勝手に悩んで騙されます。
とても興味深い作品です。

一万文字なのでまずは気軽に読んでみてください。
登場人物が多くて読みにくいように感じるかもしれませんが、
それらはただの文字列として最初は読み流して大丈夫です。初見はどうぞ気軽に。
登場人物は、一度読んで情緒を乱されたら二回目以降に咀嚼しましょう。


話運びは主人公が主観するようにも感じるし、その体での群像劇のようにも感じる。
ジャンルは推理？　ホラー？　恋愛？　ミステリー？
表記のとおりヒューマンドラマかもしれない。
深く理解しようとするほど味わいが出る。

「こういうことだろうか」と読者は疑問を抱くことがあるが、
「話の可能性の広さ」で読者に作品の本質を考える機会を与えてくれることが素晴らしい。
これは設定の雑さによる疑問とは雲泥の差。
思考の先を与えてくれる魅力的な作品である。

主人公達は小児病棟の入院患者たち。

辛い闘病生活に耐えながら、それでも彼らなりに明るく、一所懸命に生きている。

そう。「一所懸命」という言葉がこれ程ふさわしいキャラクター達も珍しいだろう。

そして彼らは「一所懸命」にあるモノを大事にしている。
「小児」病棟の患者以外の人間達は、そのあるモノがどんなに価値があって大事なのかが、いまひとつわかっていないのだ。

人間なんてそんなものである。自分が既に持っている幸福を見つめ直して「自分は恵まれている」と思う事など滅多に無いのだから。

しかし私はこの話を読んで、彼らが大事にしていたあるモノが傷つけられたシーンで胸がつぶれそうになった。

一万文字での素晴らしいミステリーヒューマンドラマである。是非多くの人々に読んで貰いたい。