イチオシレビュー一覧

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作者が読者に仕掛けた「罠」

 皇帝の婚約者である侯爵令嬢が、舞踏会で婚約を反故にされる。
 よくあるスタートですが、断罪されるのは侯爵令嬢だけではなく、皇帝の思惑もなにやら深遠なもの。
 更に皇兄や男爵令嬢、様々な視点で「なにが起こっているのか」「誰がなにをどう考えているのか」が徐々に浮き上がっていきます。

 というのがストーリーの部分です。
 しかし、わたしがこの作品をイチオシする理由は、作品内の魔法の設定にあります。
 くわしく書くとネタバレになるから書けないのがもどかしい。この設定のつくりこみは、個人的にとっても好みです。
 回復魔法が一体どのように作用しているのか、真剣に考えたことのあるひとなら、一度読んでみてください。

ざまぁするだけじゃ終わらない、陰謀は裏の裏まで続いている。

侯爵令嬢エミリアは、婚約破棄された上に断罪された。
婚約者である皇帝が、色仕掛けしてきた男爵令嬢に心変わりしたから……ではありません。
エミリアが、未来の国母としてあるまじきことを男爵令嬢に行ったからだと皇帝は言う。


婚約破棄されたあとざまぁして、相手が転落していく物語は数あれど、そこで終わりじゃないのがこの小説。
視点はエミリアだけでなく男爵令嬢や皇帝やその兄にも移り、彼らの腹のうちが語られます。
皇帝が婚約破棄した理由とは、横槍を入れてきた男爵令嬢の真意とは……。

多くの人間の陰謀が渦巻く国家の裏側を、覗いてみませんか。

婚約破棄モノ? いいえ歴史大作です

物語はとある女性が婚約破棄を告げられるところから始まる。ふんふん、よくある婚約破棄モノね。

と・こ・ろ・が!

婚約破棄を発端にして話は思わぬ方向に転がり始める。様々な登場人物の思惑がぶつかり、時代が大きく変化していく。そのうねりに飲み込まれる主人公達。そこに後世の歴史家の解釈が加わる。そう、この面白さは「歴史」の面白さだ。

「真実」と「正史」と「歴史家の解釈」が異なるものとしてしっかりと組み込まれている。

恋愛ものにカテゴライズされているものの(もちろん恋愛要素はある)、この物語は「歴史好き」にこそ読んで欲しい。

架空の世界の歴史がここに描かれている。間違いなく面白い。

これはタダの恋愛物語ではない!

婚約破棄してざまぁしておしまい。
そんなありふれたテンプレストーリーに飽き飽きしている人にこそおススメした婚約破棄物語。

展開が二転三転、先が読めないストーリー。
予想もつかない展開の裏にはちゃんとした理由がある。
読めば読むほど、深みのあるストーリーにはまっていき、続きが気になって読むのを止められない。

作者様はしっかりとプロットを組んで計画を立てるタイプだと分かる構成力の高さ。
飽きさせない展開の数々が、読む側を物語の中へと引き込んでいく。

物語の中に仕掛けられた数々のトラップを、あなたは見抜けるだろうか?
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