イチオシレビュー一覧
▽レビューを書く「草食性でも、肉食性でも、雑食性でもない。人肉食だなんて、それこそ鬼のような食性じゃないか」
カニバリズム。
いわゆる人肉嗜食というもの――有名なところで言えば『レッド・ドラゴン』等に登場するハンニバル・レクター博士などがあげられるだろう。
この『食人鬼』は、一部を除き犯人側である小夜の一人称で綴られている。つまり彼女の日常から始まり、失望、殺人、さらに人食。それらに伴う心理描写が全てなされているのだ。
文章はプロの様に丁寧で、自然で読みやすい。が、そうであるが故に抉り出される狂気の描写に戦慄を禁じ得ない。特に八・九話のあたりは読んでいて鳥肌が立った。
もう一つ魅力的なのが、吉村君と咲子さんだ。彼らのキャラクタや関係性にも心惹かれる物がある。『食人鬼』は小夜の視点で描かれているが、より正確に言うならば、小夜を狂言回しとして配置した、二人が主人公のサスペンス小説といえるかもしれない。
兎にも角にも非常に素晴らしい小説なので、是非一度読んでもらいたい。
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