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正統派大正ロマン怪奇譚

 まずは何をさておいても第一話を読んで頂きたい。

 冒頭の情景描写の語呂の良さと言葉のセンスがこの作品の魅力の代表として十分な存在感を放っています。その後に描かれる語りのような文章も実際に声に出したいほど小気味よいテンポです。

 そしてそれによって引き立たされているキャラクター達も素晴らしい。陰気な兄と快活な妹という、ある意味セオリー通りの主人公兄妹ですがロシアの妖怪と出会うことで他にはないワクワクを生み出しています。これが単純に日本の妖怪であったらここまで魅力的にはならなかったのではないでしょうか。

 激動の時代であったからこそ蠱惑的な雰囲気を出す大正時代を怪奇と言う同じく幻想的な要素で包み込み、新しい引力を醸し出している、そんな作品です。
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