イチオシレビュー一覧

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「私はただ、あなたに生きて欲しいと思います」

  • 投稿者: 林檎街   [2022年 08月 26日 07時 39分]
人間って欲が深いっていうか、
上手く言えないけど、大好きな相手であっても、
いや、大好きな相手だからこそ、ついつい色々な欲望を持ってしまったり、
それらをかなえてくれることを無意識に求めてしまったりするもんだと思う

例えば、自分が相手を思うくらい相手にも自分を思って欲しいとか
一緒に生きて行きたいとか
1番大事にして欲しいとか
ライバルじゃなくて私の味方をして欲しいとか

相手を思う気持ちと同時に抱える欲望には本当に限りがない


だからこそ、この物語の主人公の
「私はただ、あなたに生きて欲しいと思います」
という言葉は、ぽんっと胸を打つ

そこには、どんなささやかな打算も要求もなく
ただ、だた、相手を思い受け入れる言葉だから



この作者様は、強い言葉も、強烈な言い回しも使わない方なのだけれど
そのたんたんとした語り口が、逆に、
登場人物たちの、深い思いを際立たせてくれると思います

不覚にも気づかなかったこと

  • 投稿者: 真珠姫   [2022年 08月 23日 00時 00分]
固有名詞が使われていない物語です。
実は感想欄を拝読するまで気づかずに夢中で読んでいました。

領地を襲った水害により困窮しているけれど前向きな伯爵令嬢。
国王と王太子を弑して国を簒奪した叔父の手から逃れるため母親の故国で不本意にも公爵令嬢として育てられた隣国の王孫。

目が良いという加護から彼が性別を偽っていることに気づく彼女。
耳が良いという加護から彼女が人を見る目があり教え上手なことに気づく彼。

彼は歪んだ国を糺すことを期待されていますが
「何が正しいのか、正しくないのか、私にはわかりません。私はただ、あなたに生きて欲しいと思います」
と言ってのけた彼女の言葉こそが普遍。

過不足なく読みやすい文で綴られており、しかも夏バテ中でも一気読みできる字数のありがたさ。
是非あなたの読書タイムに加えてみてください。
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