イチオシレビュー一覧

乙女ゲームへ転生するという内容の、短い短編小説。限られた分量の中でも前世の描写をしっかりしているのだけど、それが読後に意味がある構成になっているのが面白い。
確かにヒロインは、前世ではあまり満たされた生き方をしていたわけではない。少なくとも主観ではそうだ。だからといって人生に絶望するものでもないし、不慮の事故で死ぬのは不幸だ。周りにとっても。
それはそれとして、転生後の世界でも幸せになっているというのが、この物語の優しい所である。異世界で幸せになりながら、現実世界の幸せも諦めない。そういうあり方も、いいのではないかなと思える話だった。

誰かの声が、聞こえる。
私の名前を呼んでいる。
それは、前世の記憶？それとも……

▫▫▫

この物語は、一見普通の転生ものに見えるだろう。
ただ、深く読んでみると違ってくる。

誰かが主人公の名前を呼んでいる所から、物語が始まる。

……が、それは前世から『今』に切り替わる場面。
気が付いたら、願っていた世界に連れ込まれていた。

不自由なく過ごしていたのだが、大人になる時に『ある想い』に気がつく。
そして、最後は……これは、実際にこの小説を読んでいただきたい。

心暖まる作品、ここにありますよ。

　物語の運命を操るのは作者の特権だ。
本作は扱いの難しいその運命という物や奇跡のような事象を違和感無く綺麗に使っており、短編ながら読者に気持ちの良い読了感を与えるように書かれているように感じた。

　一番に思ったのは、作者もまた登場人物の幸せを願って書いたではないだろうかという事だ。
登場人物はある意味で我が子のような物でもある。
その登場人物及び、作品への愛情の深さや執筆時の感情が物語から伝わってくるような気がした。

　優しい、とても優しい物語だと思う。
転生と現実世界の関わりについての発想力は素晴らしいと感じ、この少ない文字数で転生の必要性もしっかりと描写されている。
しっかり分かるように伏線も張られており、それが最後に機能している事によって読了感が強まっているのは言うまでもなく作者の技術である。

　優しい物語である本作とその作者には、心を暖めてもらった感謝の意を伝えたいと思った。

妊婦を助けた結果、階段から転落し、みんなから溺愛される末っ子王女に転生した主人公。
その世界でハッピーエンドと思いきや……!
主人公は、転生後にみんなから溺愛されても、イケメンたちに言い寄られても、前世の想い人が忘れられなかった。ある意味とても一途なので、ハッピーエンドでよかったと思います。
転生後、アスティアからもらった指輪が気になりますね。神の化身みたいなものでしょうか。凄いパワーがありそう。