イチオシレビュー一覧

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その口先の愛よりも、もっと遠くを作者は見ている。

  • 投稿者: ゆみか   [2011年 10月 23日 11時 24分]
阿僧祇さんの凄いところは、卓抜した人物描写と、そこで生き生きと再現されるキャラクターの心情へと読み手をあっという間に乗せてしまえる力にある。

以前、阿僧祇さんの他の作品で感想を書いた。「なんだか泣けました」と。するとクールに阿僧祇さんから返事があった。
「あれコメディなんですけど」
そう、コメディなのに人物に共感しすぎた私は、切なくて泣いてしまった失態を犯してしまっていた。まさに私の黒歴史。

この作品も同様だ。

乾いている心の状態にある時の人は、他者に対して、どこまでも残酷になれる。
「周りのヒトのことを考えましょう」「協調性を持ちましょう」
馬鹿馬鹿しい絵空事でしかない。
私にも幾つもあった。切羽詰まった局面では、醒めてる自分が生きることを優先させて当たり前だ。

岸崎に心が抉られて行く自分がいる。

岸崎は、誰の心の中にも棲みついている。いないというやつは大嘘つきだ。
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