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えっ,ザラキもあるんですねこの世界には

  • 投稿者: 路瀕存   [2011年 11月 03日 06時 10分]
 この詩の魅力は,主題が想像力をフルにかきたててくれる,これにつきます。そもそも生物学的な意味において「ことば」が「ひと」を「殺す」ことは生じえないので,「ではどんなふうに『ことば』が「ひと」を殺すのだろう」という問いが立つからです。
 社会的? 自殺幇助? ――いったいどんなふうに?
 疑問を抱かせられたまま2連目にいくと,いきなりここで,この詩は,現実主義者を裏切ってきて「ああそれは呪文のことです」,えっ,ザラキもあるんですねこの世界には,と。こうして読者は無意識のうちに,「いち行でひとを殺すことば」として思い描きうる想像の幅がmanyからanyにさせられているという次第なのです。
 また,変奏と変容回帰が巧みに使われているために,ぜんたいにリズムがうまれている詩です。類義累積してゆくなかで,さいごに変奏しているため,主題はいっそう引き立てられています。
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