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ドングリ号は続くよどこまでも

 急速な過疎化になり、1番若くて60歳と老人たちばかりとなった栗原村。
 鉄道会社の赤字路線廃止により、蒸気機関車ドングリ号は処分されることになった。
 ずっと一緒にいたドングリ号とお別れの会の夜、なんと村人を乗せて燃料もないままドングリ号が走り出したのだ。
 彼らの熱い思いから動いたドングリ号だが、それを列車ジャックだとして叩き潰そうとする鉄道会社と大騒動が始まる。

 物にも魂が宿ると言いますが、このドングリ号はまさに魂が宿っていたのでしょう。
 村人達のドングリ号への深い愛が燃料となって前へ前へと進む姿、そしてその姿に心の底から喜び何が何でもドングリ号を守ろうとする真っ直ぐな姿勢に、読者の胸が強く打たれるのです。
 それぞれの老人達が生きた証である物語を、そしてダイナミックで元気をくれる素敵な作品を是非今1度ご覧ください。

「生きてきた証」に、さあ、みんなで乾杯しよう!

まず登場人物たちの年齢からして破格です。1番若くて60歳、最高齢が97歳の村人たち!
そんな村人たちが、用済みになった蒸気機関車ドングリ号に乗り込んだとき、物語は走り出します。

そう、走るのです。このドングリ号、燃料もないはずなのに走る走る。青龍の不思議なパワーと村人たちの願いに押されて、すごい勢いで走っちゃう。
そうして走ったその先に……。

児童文学の趣もあるファンタジーですが、勿論その枠にはとどまりません。あらすじにある作者様の言葉を紹介しておきましょう。

「これは、それぞれの老人たちが生きてきた証の物語です」

1年の締めくくりであるこの時期にふさわしい物語だと思いませんか?

ドングリ号は永遠の命を乗せて

  • 投稿者: 雪縁   [2023年 07月 19日 17時 18分]
かつては鉱山の村として賑わいがあったものの、閉山後は急速に過疎化が進み、六十歳を一番の若手とする老人の村となってしまった栗原村。鉄道会社の赤字路線廃止に伴い、長らく村人達の足として走り続けた蒸気機関車ドングリ号の処分も決まり、お別れの会を催していたその夜に、奇跡が起きた。村人たちと会話するように汽笛を鳴らすドングリ号。彼らを乗せて、ドングリ号の自由気ままな旅は始まる。人生の辛酸を嘗めつくした村人たちに寄り添うかのようにドングリ号の旅は続く。途中、列車ジャックの疑いをかけられ、危険な目にもあうが何のその。奇跡のドングリ号は不滅である。
高齢の村人たち、大正、昭和、平成を走り切ったドングリ号。限りある命ではあっても、底知れぬパワーがみなぎっている。一人一人の命は永遠であり、人生を生ききることの大事さに気づかされる。
 ドングリ号の旅はまだまだ終わらない。
 




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