イチオシレビュー一覧

上質の洋画を観終わったみたい……。読了後にため息をつきながらそんなことを思いました。

中位貴族の息子カディオが幼馴染の貴族令嬢に恋をする。けれど成長した彼女は思わぬ苦境に立たされていた。
彼女を想い続けつつ、蛮族との戦いに赴くカディオ。指揮官として活躍するが……。

このように粗筋だけを見ると異世界恋愛の典型のようですよね。
でも格調の高さと美しさが段違い。
大人気作『アルマーク』の作者様だと思えば、その出来栄えに納得です。

大迫力の戦闘シーン、脇役王子や古参兵たちの魅力も味わいつつ、心憎いばかりの素敵なラストを、ぜひお楽しみください。

　キーワードに並ぶ『悪役令嬢』『幼馴染』『婚約破棄』『ハッピーエンド』『ざまあ』の文字。これを見て、『悪役令嬢物』の『テンプレ小説』だろうと思い、忌避してしまったあなた。あなたは間違いなく損をしている。この比類なき力作に出会う機会を逃したのだから。

　本作は恋愛小説である。しかし、それと同時にファンタジーであり、戦記であり、アクションであり、ヒューマンドラマでもある。中編ながら世界観は本格的だし、戦闘シーンは手に汗握るものがあり、登場人物たちの心の交流や心情の描写も秀逸だ。

　それでも、徹頭徹尾一貫して流れているのは、主人公の、熱く、一途な恋心。それはまさに『漢』の恋愛と言ってよいだろう。

　もう一度繰り返す。本作は、テンプレ的な恋愛小説ではない。唯一無二の、硬派な恋愛小説なのである。