イチオシレビュー一覧

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遠いはずなのに最も身近に感じてしまう悲劇。

朝、血まみれの光景から始まる衝撃的な物語は、読者を否応なく引き込みます。

本作は、異質な作品です。
万人受けはしないでしょう。

しかし、そのグロテスクな描写、容赦のない悲劇、暴力、そして不気味さが深く陰鬱な雰囲気こそが、この作品の魅力なのです。

社会の片隅で、必死に生きる人々の過酷な現実。
そして、心の奥底に潜む、目を覆いたくなるような欲望。

そんな中で、主人公と少女・咲の出会いは、一筋の光のように、読者の心を捉えます。

その光と闇のコントラストが、胸に突き刺さるように、深く心に残ります。


読後、あなたはきっと、何かを感じずにはいられないでしょう。この作品が問いかける、人間の本質、社会の歪み、そして希望。それらについて、深く考えさせられるはずです。

痛みが止まります

安部公房さまの、確か『方舟さくら丸』だったと記憶しているが、こんなような文章があった。
『痛ましいニュースは嫌いだ。自分はまだ大丈夫だと確認して安心するようなものだから』

私がレビューするこの作品は痛ましい。
そして物凄く、痛い。自分の目玉がほじくり出されるような、自分が道路で轢かれているたぬきになるような、そんな痛覚を与えてくれる。
今、私は仕事その他で体のあちこちを傷め、毎日「いたーい、いたーい」と言いながら過ごしているが、その口が止まってしまった。
このひとたちに比べたら、自分の痛みなんて大したことない。
自分はまだ大丈夫だと安心してしまったのである。
それほどにこの作品は痛みで満ちている。それは身体的な痛みにとどまらない。心の痛み、そちらのほうがよっぽど痛いのだとわからせる。
そんな中に、ほんの二つだけ、ほっとするような場所が描かれる。人はそのために生きているのだなと思わされた。

「なろう」で、ここまで書くその度胸と筆力に拍手を!!!

  • 投稿者: 立花 優   [2024年 05月 22日 14時 07分 ()]
最近は、主に、別のサイトに投稿しいているこの私です。

久々に、「なろう」を覗きに来たら、何故か「お気に入り」に入っていた、この作家先生の作品(代表作)を読みました。

他のサイトで、猟奇的な、推理物やホラー物やSF物を、投稿しているこの私ですが、それでも、思わず引き込まれるように読んでしまいました。……うーん、異才、「なろう」に現るか?

いわゆる一般の「なろう系」とは、明らかに、一線を画すこの作品。

是非、一読を、お勧め致します。

心に「信」を置くこと、それを貫くことの難しさ

  • 投稿者: 退会済み   [2024年 01月 19日 14時 25分]
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人を信じられなくなった男と、
人を信じられるようになった少女、
二人の出会いを「運命のイタズラ」と言い放つことはたやすい。

あらゆる人に「なるべくしてなった過去」があるのであり、
あらゆる人に「偶然、そうなってしまった過去」がある。

その過去を積み重ねることによって、
ある者は人を信じられなくなり、
ある者は人を信じられるようになる。

この物語の「男」と「少女」は、物語の最初から、
「人を信じられなくなってしまった」境遇である。
二人は出会い、互いの共通点を見出して、やがて
互いに信じ合うようになる。

その共通点が「人を信じられない境遇」というのは、
皮肉を通り越して、残酷というほかない。

その中で抱いた互いを信じる心。

心の中に「信」を置き続けることがいかに困難であるか。

この作品はそれを問い、教えてくれる。

人間のしたたかさと笑顔の驚嘆

  • 投稿者: おーばる   [2023年 12月 15日 00時 22分 ()]
万人に向いた作品ではない。生きることに見切りをつけた経験があるか、想像力のある人間でないと、嫌悪感を覚えると思う。
酷い境遇・事態でも前向きに生きようとする人間のしたたかさ、些細な選択で幸せが握り潰される人生の残酷さ。誇張した表現になってはいるが、現実にそれなりによくある話で、実話に基づいたフィクションのような話だ。けっして救いのある話ではない。
章題の“ひらがな”を念頭に置きながら読んでいたが、いつの間にか話に惹き込まれ気にせずに読了、主人公に感情移入し辛くて泣いた。余韻が収まり、改めて章題を読み紡いだ時、また、泣いた。
これだけ残酷な物語を作り上げた作者が、読者に直接かけた言葉は、あまりにも物語と対照的で、その明暗に、心が揺さぶられた。
それは、同情でも、憐憫でもない。どれほど残酷な境遇でも前向きに、したたかに生きていく人たちに向けた、笑顔で告げる「お前すげぇな!」という驚嘆に思えた。
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