イチオシレビュー一覧

　若い。
　良く言えば瑞々しく、悪く言えば青く拙い。
おそらく作者はまだ未成年なのだろう。まだまだ描写も文章もこなれておらず、ストーリーにも粗が目立つ。
　しかし、それらを補って余りある、繊細な感性と感情表現のリアリティが、読み手を惹きつける。主人公と友人との口論の際の描写など、是非読んでみて欲しい。なまじに技巧にこなれると、非論理的な感情の動きも言語化し整合性を取ろうとし、かえって生の感情の鮮度が失われがちである。しかしそれとは対極にある、非論理的でも誰もが幼い頃に感じたような、素直な心の動きがそのまま描かれている。
　技術を学び、そのために少し正解を見失ないそうになった時にこそ読んで欲しい。小説を書き始めた時の楽しさや喜びを懐かしく思い出させてくれるような、優しい感性がここにある。
　この感性を失わず、伸びていって欲しい。期待している。