イチオシレビュー一覧

▽レビューを書く

家族として長年連れ添ったアンドロイド

 主人公が小学生の時に、父が連れてきたアンドロイド。
 このアンドロイドを今まで自分の母親として、父の妻として長い間付き添ってきた。
 それから30年後、父が亡くなり、「母」は1人残されながらも、楽しそうに暮らしていた。
 しかし、長い月日のせいで、データ量が多くなってしまい、動きが鈍くなってきて……。

 こんな未来が起こるのではないかと思われるお話。
 読んでいて切なくもなりますが、それと同時に心も温まる、本当に素敵な作品です。
 今一度ご覧ください。
 

家族愛を学習したAIを初期化するなんてできない

介護用アンドロイドを息子の母親代わりに家に迎えた父親。
アンドロイドは家族愛を学習し、本物の母親のようになっていく。
息子も嫌いだった本当の母親を忘れ、その機械に情を移していく。

やがて父親が亡くなり、息子は大人になった。
経年劣化とメモリーの増えすぎで『母』はポンコツになった。
介護用アンドロイドを人間が介護する日々がはじまる。

私はこの作品を『AIが愛を覚える物語』ではなく、『長年愛用した機械に対する、人の愛を描いた物語』として読んだ。

スマートフォンにしろパソコンにしろ、クルマにしろオーディオ機器にしろ、長年愛用した機械というのは愛着の湧くものである。
思い出の詰まったGoogleフォトは新しいパソコンに移すことは出来る。が、それが入っていたパソコンを初期化することは、なんだか自分のパソコンが自分のものではなくなるような気がするものだ。
寂しい、哀しがる、人間。

アンドロイドの母を持った家族の話。心に響く傑作です。

実母と離婚し、母代わりとしてアンドロイドを買ってきた父。
雨子と名付け、親子で設定したそのアンドロイドを母として主人公は生きていきます。
余命宣告を受けた父が死に、アンドロイドの母を託された主人公でしたが、徐々に問題が発生し、とある決断を迫られることになって――。

アンドロイドの母を持った家族の話。
とても心に響く傑作です。とても素晴らしいのでぜひご一読ください!

終わっていく家族の物語でありながら、不変の愛の話でもある。

 珠玉の名作と言っていい。いわゆる『なろうエンターテイメント』とは真逆の方向性にあるが、読者の心にいつまでも残る、そういう作品だ。『アンドロイド』雨子さんの、静かで控え目な愛情が、乾いた心に慈雨のように降り注ぐ。

 アンドロイドは永遠のように思うけれど、経年劣化には逆らえない。全ての記憶を無くせば、生きながらえることもできるが『愛』を忘れた人生にとって『生きながらえる価値』とはなんだろうか。主人公の雨子さんに対する思慕は本物の母親に対するものと変わらない。

 終わっていく家族の話ながら、不変の愛についての話でもある。是非みなさんにも読んでいただきたいです。
↑ページトップへ