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「これ以上ないほど甘い夢」

  • 投稿者: 地湧金蓮   [2024年 02月 16日 11時 48分]
 本作は石河 翠様プレゼンツ「勝手に冬童話大賞」ビターエンド部門を受賞されてます。すでにレビューも複数ついてて、皆様異口同音に、読む人の人生観によって解釈がわかれる作品とおっしゃられてます。

 私の考えでは、「トウのお母さんがなぜ、なにを考えて『夢ケ淵』に砂糖大根をとりに行ったのか」ここをどう考えるかがポイントじゃないかと思っております。

 個人的に、明確な解釈はまだできないのですけれど。でも、「これ以上ないほど甘い夢」は「これ以上ないほど暗い現実」に裏打ちされているのではないかと、思っております。

 お時間ありましたらぜひご一読くださいませ。


甘く甘く、そしてほろ苦い、美し過ぎる物語。目の前の景色が美しいほどに、泣きたくなるのはなぜでしょうか。

物語の主人公は、塩炊き屋の子であるトウ。トウのお母さんは、毎日一生懸命海水を煮詰め、塩を作っています。

このところずっと熱が下がらず、日に日に具合が悪くなっていくトウのために、お母さんは砂糖大根を探しに行くことにしました。心細いなかひとりでお母さんの帰りを待つトウ。

ところがようやく帰ってきたかと思えば、お母さんは我が子であるトウのことがわからなくなってしまっていたのです。トウは、お母さんと一緒に再び砂糖大根を探しにいくことにするのですが……。

ラストの情景をどのように捉えるかは読み手次第。あまりにも美しい情景にめまいがします。

物語の中では、トウの性別は明らかになっていません。息子なのか、娘なのか、それによって母との関係性や見えてくる景色が大きく異なってくることでしょう。その辺りもふまえて、読み終わったあとに何度も反芻したくなる作品です。

ラストで母子は「幸せ」になります。但し、これは「ハピエン」ではないようです。あなたはどう思うでしょうか? ご一読のほどを。

  • 投稿者: 水渕成分   [2024年 02月 06日 06時 21分]
「小説家になろう 冬童話2024 ゆめのなか」参加作品です。

7067字でジャンルは童話ですが、民話、ヒューマンドラマ的要素が強く、小学校高学年以上の子の読書に向いています。

主な登場人物は塩炊き屋を営むお母さんと病弱なその子トウ。

トウが不憫なお母さんは「夢ヶ淵」にあるという食べると元気が出るという砂糖大根を採りに行きます。

採って帰ってきたお母さんですが、何とトウのことを忘れています。「夢ヶ淵」は禁忌の場所だったのです。

一緒に砂糖大根を食べるトウですが、トウを忘れてしまったお母さんは「この砂糖大根は自分の子どものためのものなのに食べてしまった」と悲しみます。

それを聞いたトウはお母さんと二人でもう一度「夢ヶ淵」に砂糖大根を採りに行きますが……

ラストで母子は「幸せ」になります。但し、これは「ハピエン」ではないようです。あなたはどう思うでしょうか? ご一読のほどを。
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