イチオシレビュー一覧

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生きるとは何か、それを教えてくれる二人の旅路

ドワーフの少年と僕っ子エルフ少女の、互いに目的のものを探すための旅路。
共に暮らしていた同族は絶え、孤独となったドワーフのガラン。ファンタジーの世界であるが、決しておとぎ話のように煌びやかな世界ではない。彼らが生きる世界、生活の営み、そこで築いてきた文化をリアリティかつ丁寧に描写した筆力はこの作品の魅力と言えます。
特に、食事場面は圧巻の表現力。これは是非とも読んで頂きたい。

生きるとは食べる事、そして他者と交流し、友を得る。時に悪意に晒され、時に助け合い…そんな、生きるとは何か。生き残る、生き延びる、目的を探して生きてゆく、そんな大事な何かをガランとアッシュの旅路の一幕を垣間見ることで、こちらも考えさせられる。
そんな素敵な物語を是非、一度読んでみませんか。

これを読むことで他のファンタジー作品の読み味も変えてしまうような

例えばキャンプで寝床を用意する場面。
水場の確保、寝床の準備、食べ物の支度など、旅人が休むと決めてからしなければならない作業を丁寧に書く。
ガランの大袈裟な荷物が、決して無軌道に選んだものではないとわかってくる。

例えば初めて人間を相手に戦うシーン。
商隊がどのように陣を張り、どう守るのか?
襲う野盗側も無策ではなく……

このように記号的に書けば済むところを丁寧に書くことで、これまで読者の意識に昇らなかったものが見えるようになっていく。珍しい体験だった。

「物語を手早く進めないと読者はついてこない」のような言説はWEB小説界隈ではよく聞く言葉だ。
「読者は物語を読みに来ているのであって、世界を見に来ているのではないのだ」と。

ある程度は同意する。
その視点に立てば、この物語は歩みが遅く、枝葉にばかり構っているように見えるかも知れない。
その上で、この作品には一読以上の価値がある。

里の外には何があるのだろう

独特な雰囲気を持つファンタジーだ。
ドワーフとエルフのコンビというのは、種族だけで言うならばファンタジー作品としてはありふれたもの。そんなふたりだが、なかなかにキャラは個性的だから読んでいて退屈はしない。

タイトルには旅路とあるが、旅に出るまでの過程に長く筆が割かれているのも特徴的だ。
その間に書かれるのは、ドワーフの一人旅と、エルフの里での暮らし。里にたどり着いたドワーフが共同体の一員として認められたり、そもそも里ではどんな暮らしが営まれているのかを丹念に書いている。

その描写が丁寧だからこそ、旅立ちに意味がある。共同体から抜け出てまで行きたい外の世界への憧れ。そこに何が待っているのかの期待を高めてくれる。だから、この話は面白いのだろう。

五感で楽しむハイファンタジー

  • 投稿者: 天海二色   [2024年 06月 15日 21時 50分]
ドワーフのガランとエルフ僕っ子(そしてTSっ子)が紡ぐ、五感で楽しむハイファンタジー

ドワーフとエルフという、現実には存在しない種族の文化を緻密に描いた小説です。
歯を磨く、朝ごはんを食べる、水をくむ。日常動作一つ一つを見てきたかのように細かく描写し、現実には存在しない種族の生活を間近に感じる事が出来きます。

特にご飯。
食事を作る所から食べる所まで、匂いや味を感じられるほど臨場感溢れる書き込みでこちらのお腹がすきます。キャラクターが食事を摂る度に飯テロです。

ただしスローライフとはまた違い、直接の描写はないものの村が滅んだ話が出てきたりと、水面下では不穏な気配が絶えません。

日常ではほのぼのとした異種族の生活が、戦闘では魔法を駆使したファンタジーを味わえる、メリハリの効いた作品となっております。
序盤はスロースターターぎみですが、それ以上に面白い。是非ご一読ください。

始まったばかりの旅。ガランの行く末は──? 

  • 投稿者: 往雪   [2024年 04月 24日 17時 11分]
ゆっくりと展開していく物語が印象深いです。

ガランとアッシュ、二人それぞれの人となりの説明。
そして世界観の描写があって、ようやくストーリーが始まります。

描写がしっかりとしており、地形や戦闘描写といった視覚的なものから、
ガランの思考までしっかりと描かれているため、彼の旅に一緒に没入できます。
危険があればひやっとして、美味しいものを食べているとこちらにも匂いが漂ってくるようです。

どこをとってもこの世界にとっての現実が描写されており、世界観の重厚さが窺えます。

アッシュ視点はまだまだこれからですね。
第八話の展開からも期待が高まります。
今後はストーリーも大きく動いていきそう……?

初投稿作品とは思えないほど設定の凝った一作です。
ぜひ。
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