イチオシレビュー一覧

うどん自販機というものがある。
大変レトロな自動販売機である。
この自販機の全盛期というものを私は知らない。
私が産まれたときにはもうこの自販機は消えていく運命にあったと思われる。
衛生的尚且つ湯さえあればどこでも食べられるカップ麺の普及によって姿を消してしまったのか。
それともコンビニの広がりと共に消えてしまったのか。
おそらく両方なのだろう。
それでも今でも頑張る自販機とそれと支える人の事を考えると感慨深いものがある。
是非とも一度は行ってみてはどうでしょうか？

「　まずは一口、つゆを啜る。
　朝から何も食べていないからっぽの胃を、想像よりもしっかりとしただしの味わいがほっと温めてくれた。」

この一文にAjuは痺れた。
なぜって？　ここには「ワクワク」とも書いてなければ、つゆの色も具体的な味も匂いも温度も書いてない。つゆの中の麺の描写すらない。
それなのに、今まさに自分が食べようとしてるかの如くそれらのイメージが豊かに現れ、唾液まで出てきてしまう。降りしきるような蝉の声まで聞こえる。
未来屋ワールドの未来屋魔法だ。書かれていない言葉が、読者の胸の内にある言葉の泉を刺激し、そこから溢れるように言葉やイメージを湧き上がらせてくれる。
この作品だけじゃない。未来屋 環 という作家の文章には、無限と思えるほどの言葉の地下水脈があり、読むあなたの胸の泉につながっているのだ。
　Ajuがこのワールドのファンである理由です。