イチオシレビュー一覧

復讐を誓いながらも、紅茶という日常のささやかな幸せを大切にするエマが魅力的でした。
過酷な過去を持つエマですが、彼女は他者を哀れみ手を差し伸べます。そんな彼女のまわりだからこそ、アジールのメンバーたちは集まりました。

前世では息子がいるアラフォー女性だったエマをはじめ、成熟した精神を持つ彼らですが、社会的強者に搾取される弱者に手を差し伸べるための手段は様々です。あるときは慈善活動、またあるときはモンスターの姿で……。

悪を掃討しながらも自らも悪に染まっていくという矛盾を抱える闇の組織アジール。

矛盾と、日常のささやかな幸せとを同時に象徴したようなカフェ「プチ・ぺシェ」を拠点に紡がれる復讐譚。

前世の記憶があり、さらに呪われた身でもある主人公エマの葛藤や、人付き合いが得意ではない彼女の周りとの関係性もとても繊細に描かれていました。

とても面白かったです。

ファンタジーの世界でありながら現代にも通ずる社会の闇
日本は総中流などといわれ階級とは無縁と思われていたがいまや格差階級は顕著化して司法も機能不全のいま、自警団ならぬ必殺仕事人に悪の討伐をもとめている。この物語の世界もまさに、果たせぬ復讐をある方法で自ら果たしていく。しかし自警団、仕事人は正義ではない。超法規的暴力による復讐。悪の成敗は同時に安寧では済まされない新たな不穏と悲劇が見え隠れする。しかし主人公の人柄や取り巻く人物たちは優しく生きる。その安らかな時間が物語に心地よいリズムとなって読み手にも優しい魔法をかけてくれる。ひとつひとつ意味のあるネーミングや社会情勢。作者の持つ世界観はとても深い。光と影を体感しました

美しい心の持ち主による、醜い復讐の話だ。

復讐の是非というものは、多くの作品で書かれるテーマだ。復讐は何も生まないとか、むしろ更なる悲劇を生むとか。意見は色々あるだろう。それでも多くの作品で復讐はなされる。今作のように。

この作品で行われる復讐とは、世の中の悪を断罪するために、醜い化け物に変身して悪人へ直接的な暴力を振るうというもの。復讐の場はおびただしい血で汚れて、人々を恐怖させる。それはあまりにも醜い。たぶん正しくもない。
けど、必要なことだ。主人公たちはそう考えているからやっている。

主人公自身は美しい心の持ち主。出会った素敵な男性と良い仲になったりして、その交流する様は心が温かくなる。故に、同じ人物が裏で行う復讐劇が際立つ。

復讐というこういの是非について、意見は多くあるだろう。その中で、この物語の復讐のあり方は、とても頷けるものだった。