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史実と架空の狭間へ

西暦一九四五年、ダッハウ。
ナチスが運営するユダヤ人収容所に収容されていた医師・バッケンシュタインは、殺される寸前に突如、収容所長であるハインリヒ・ヴィッカー特務曹長によってその場から連れ出され、ベルリンへと連行された。
一時難を逃れたバッケンシュタインを待ち受けていたのは、何と、ナチスの総統・ヒトラーその人だった。

呼び出された主人公が、ヒトラーと対面するまでに交流したドイツ人達。
彼らは、ナチスに属する人達と違って、普通に見えた事が、主人公の心境を複雑にさせる。
ドイツ人将校の幼い娘と優しい交流を持つ一方で、ユダヤ人を迫害したナチスに激しい憎悪を燃やす主人公が、葛藤の末に行き着く先、そして、憎むべきユダヤ人医師を呼び出した、ヒトラーの目的とは――。

なろうに於いては『硬い』と言われる種類の文章ですが、確かな文章力と、考証に裏打ちされた興味深い作品です。
是非、ご一読の程を。
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