イチオシレビュー一覧

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荘厳なる静けさをまとった空気に触れたい時、に読みたい短編物語

この作品は、まさに、知識の海が、その風景が見えるかのようでした。
異国のような異世界のような。
この世界と地続きのような、全くもって違うような。
そんな場所で。
うつくしいことばによって、広がる海。
学僧の足にふれた、静かな、しかし豊かな海を私は見ました。
私の目に映った海が、皆様にお見せできないのが悔しいです。
早いとこ電脳映画館とかできないかしら。

本を書くという誉れ

かつて書物は高価なものだった。紙が高価だし、印刷技術も未発達で複製が大変。なにより、他者が読むに値する内容を書くには、高い知性が必要だった。かつて、本を鎖に繫いで外に持ち出すことが出来ないようにしていた図書館もあったとされる。

それほどまでに本は貴重で、尊ばれるものだった。

1000字ちょっとの短編で書かれるのは、そんな本にまつわる仕事をしている僧侶。貴重な本を丁重に扱いつつ、自身も本を書くことに憧れる若者の視点で世界を説明する。
この世界では、書こうと思えば書けるわけではない。ある日付与される資格が必要になる。
だからこそ、書けることは名誉だ。皆が憧れている。

本は貴重で、書ける者も貴重。本というワードから世界を広げつつ、それを作る者に焦点を合わせていく内容が、興味深い。面白い世界が見えてきて、興味深かった。
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