イチオシレビュー一覧

　愛人の子どもリヒトールは、実の父を殺そうと考えている。それだけを聞くと怖い話のようにも思えますが、そうではないのです。その彼の思考が暴力的なわけではなく、リヒトールは、今までの人生からそう考えるようになってしまった。
　そうしているうちに会ったのがデボラ。太陽みたいな女の子。リヒトールが太陽に手を伸ばしたくなるのは、きっと必然。
　二人の様子をずっと見ていたくなります。リヒトールがデボラに甘える様子も、リヒトールがデボラのことをたくさん考えている様子も、デボラがリヒトールに向ける感情も。どれも泣きたくなるほど美しいです。
　リヒトールとデボラのやり取りだけではなく、他の人との関わりの様子も描かれているのもこの作品の魅力です。リヒトールだけではなく、他の人もいろいろ考えているのが伝わってきて、じんわりと心に染み渡ります。

　何度も読み返したくなる作品です。彼らの愛を、読んでほしいです。