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神話と人間ドラマが交差する、魂を揺さぶる異世界叙事詩

剣と魔法、神話的要素が融合した壮大なファンタジー叙事詩でありながら、人間(あるいは人ならざる者)の心の機微に深く踏み込んだ秀作です。主人公シグルズは剣士としての強さだけでなく、異種族や敵とされる存在とも心を通わせる誠実さと器の大きさを持ち、ただの英雄譚に留まらない厚みを与えています。

翼竜ファフニールとの戦いは、単なる討伐ではなく、敵の背後にある悲劇と知性に向き合うことで「共存」という答えに至る展開が秀逸です。また、宰相ミミルの息子ドルズを巡る一連の事件は、社会階層や教育、赦しと更生を丁寧に描写しており、物語世界に生きる人々のリアリティを強めています。

戦いと日常、理性と情熱、正義と赦し――あらゆる対比の中で、登場人物たちは確かな歩みを見せており、読後には静かな感動が残ります。
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