イチオシレビュー一覧

受験を終えて大学に入った、綾芽（あやめ）と凌牙（りょうが）。受験で挫折を経験し、まだ複雑な想いの凌牙ですが、「友達になって」と切り出す上京したばかりの綾芽に、大学近くの純喫茶でアルバイトをしていることを伝えます。

やがて、同じ喫茶店で働くようになる二人。ある日、綾芽が明かす、受験当日の思いがけない真実に、凌牙は……。

純喫茶で二人が交わす何気ないやりとりや仕草、店内の様子が、初々しさとともに瑞々しく描かれ、惹きこまれます。

こころに花咲く春は、ひたむきに歩み続ける日々の中に芽吹いて。

新芽をやさしく照らす春の光のような、そして、ひたむきに頑張る背中を、そっと後押しする風のような、素敵な純文学作品です。ぜひ、ご一読ください。

Ajuごときがレビューを書くのも烏滸がましいのだけれど。。
内容もさることながら、さらに磨きがかかった、あるいはふくよかさを増した未来屋ワールドの最高傑作の１つだと思います。
目を凝らして見れば‥‥ほら、そこにも、そこにも‥‥。目立たないけど香りたつような言葉の花々が‥‥。
まるで名人の将棋の１手のように、そこしかありえない置かれ方をした言葉たち。
こんな書き方をすると「厳しさ」のイメージがあるかもしれませんが、そこに現れるのは豊かさと繊細さと優しさに包み込まれるような世界です。
天使の羽でできた船に乗って、穏やかな海の波に揺られているような。
え？　作品の内容は？　ですか——？
そんなの‥‥。読んでいただければいい。