イチオシレビュー一覧

▽レビューを書く

深く心に響く一作です

  • 投稿者: ももか   [2025年 06月 14日 22時 59分]
この作者さんの作品はいつも、言葉の奥深さと物語の力を再認識させてくれます。『四都物語異聞:白狐の影』もまた、深く心に響く一作でした。
 今回も研ぎ澄まされた文体と情景描写の美しさに魅せられました。右京の路地裏の寂しさ、お里の深い悲哀、そして白い狐の神秘性が、目に浮かぶかのように繊細に描かれています。言葉の選び方一つでここまで心象風景を伝えられることに感銘を受けました。
 物語は、息子を亡くしたお里が、白い狐との静かな交流を通じ、閉ざされた心に温もりを取り戻す過程を描きます。言葉を交わさずとも通じ合う絆、穢れた魂を浄化する終盤の展開は、胸を打ちました。これは単なるファンタジーではなく、人の「悲哀」や「癒やし」、そして「魂の安寧」という普遍的なテーマが、和風の筆致で丁寧に紡がれており、文学作品としての深みを感じます。
 人生経験はまだ浅いですが、この独特の世界観と表現力に強く心を掴まれました。

やっぱり好きです。

  • 投稿者: 洲山爽夏   [2025年 06月 13日 23時 25分]
「四都物語異聞:白狐の影」、読み終えてじんわりと心に温かさが広がりました。里というおばあさんの、深い悲しみから少しずつ立ち直っていく姿が、本当に丁寧な言葉で描かれていて、まるで自分も隣で見守っているような気持ちになります。
 特に惹かれたのは前作もそうでしたが、文章の持つ雰囲気です。静かで、どこか懐かしいような、それでいて心の奥底に響くような筆致が、物語の世界観と完璧に合っていました。白い狐の神秘的な存在感も、里の心の変化をより一層際立たせています。言葉を交わさなくても通じ合う二人の絆には、本当に胸を打たれます。
悲しみや喪失を経験した全ての人に、そっと寄り添ってくれるような、優しくて美しい物語でした。読後も清らかな香りの余韻が残るような、そんな作品です。大好きです。
次回作も期待しています。
↑ページトップへ