イチオシレビュー一覧

　戦記物の人気作品は、ヒーロー視点で描かれるが、その中で作者の好みは、主人公の立ち位置に現れるのではないか。
　多くの作品の世界設定において、主人公はその中心に立っている。それがどんなに激しい物語であろうとも、世界の片隅の一出来事と言う描き方をすることは少ない。
　黒騎士という視点の面白さは部外者、傭兵的な立ち位置を強調できることだろう。本作は主人公を起点とした物語でなく、作品世界の主人公とも言える問題児の召還に巻き込まれる形での物語への参加となる。
　コーリング（召還）の醍醐味は、平凡な生活から刺激的な非日常のカタルシスを読者に提供することにあるが、もう一つの大事な要素がある。
　それは異なる文化の衝突による驚きや発見の過程を描くこと。
　本作では、女性作者の家庭的視点が序盤から現地世界人との交流を深める機会として作用するが、このあたりをどこまで掘り下げるかを一読者としては期待したい。