イチオシレビュー一覧

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宿屋主人の気苦労なる日々

  • 投稿者: 綾埼空   [2015年 06月 20日 23時 04分]
 人と妖の世の間を流浪する宿屋――紅梅乃花弁を舞台とした人間、或いは人外たちの気苦労な日々を綴った物語。

 誰もかれもが居場所を求めて己を偽る。居場所を手に入れたから悩む。居場所を守りたいから戦う。

 生きるために失い続け、失いたくないから抗い続ける。

 苦悩した先に選んだ答えは、儚くも美しい。

 人と妖の間に生まれた宿屋主人。人の世と妖の世の狭間で生きる彼の気苦労は、今日も終わらない。

傑作以外の言葉が必要なのか

  • 投稿者: 足軽三郎   [2014年 12月 13日 10時 13分]
 惹きこまれた。いや、もうそれ以外の言葉が見つからない。

 現代日本を舞台にしたこの作品はその背景に一つの仮定がある。即ち異能の存在。つまり陰陽道や魔性の化け物、西洋魔術や伝説の武器などだ。普通はこれらの要素を取り入れるとその影響やインパクトが強すぎて、物語がそれに染まるのだが。

 この作品はそれに負けないだけの鮮やかなストーリーと登場人物の感情描写がある。一話一話の長さが結構あるのは、ある程度の文字数が無いとそれを表現しきれなかったからだ。このバランス感覚がまた絶妙。


 流転の宿屋に今夜漂泊するのも悪くはありませんよ、お客様。あなたの空想力を刺激して止まない物語をこの宿屋は......惜しみなく提供してくれるのですから。

定期的に読みたくなる隠れた名作

  • 投稿者: 藍藤 唯   [2014年 04月 27日 20時 28分]


不思議な魅力がある。

主人公のキャラがどうとか、キャラクターが可愛いとか、ストーリーが空前絶後の展開を見せるとか、そういう分かりやすい魅力とはまた別の、引き込まれる力がこのお話にはある。


強いて内容から挙げるなら、従業員たちやクラスメートとの温かい掛け合いと、戦闘とのギャップ。宿屋自体の設定と絶妙にマッチした世界観と、表現法。

一つとっても好ましいそれが、巧みに合わさって美しいハーモニーを醸し出し、癖が強くとも猛烈に美味い料理のような、そんな何度も読み返したくなる不思議な魅力がここにある。

上手く伝えられずに申し訳ないが、例えるならそう。また来たい、とそう思う旅館のような……

あぁ、そうか。

僕もこの宿屋に惹き込まれた、旅人の一人なのかもしれないな。

皆も一度、来てみると良い。

僕が、保証しよう。
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