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何を大切にして生きていくか。

  • 投稿者: 防衛太郎   [2022年 08月 25日 13時 09分 ()]
金、地位、名声、何を大切にして生きていくのか。

人一人がその手を延ばして、幸せに生きていこうとする中で、何を大切にしていくのか。選んで大事に抱えていけるものは決して多くない。

自分が選んだものを、揺るがず大切に持ち続けていきたいと、そう思わせてくれた大切な物語でした。

ありがとうございました。

こがね。どうか元気で。

どうして異種混類譚は、浮き彫りにするのだろう。人を

人をひねた山伏崩れがおった。

それがふとした事から、狐と縁(えにし)が出来た。

あんちゃ、あんちゃと鳴くこぎつねは、いつしか掛け替えの無い者となった。

どうして異種混類譚は、浮き彫りにするのだろう。人を。

いっそ人とは違うのに、そこに溢れる想いに、胸は貫かれる。

昔話のテイストを守りながら、それでいて古さを感じさせない物語。

からからと、風車が、ただ回る。
それが、初めて読んだ数年前からずっと、私の胸にそのおとは残っている、

これはそんな切ない、男と狐の心の物語。

異種婚姻譚「きつねよめ」に没入せよ。

「日本むかしばなし」を思わせる、丁寧でゆったりとした、王道を行く語り。喚起力に溢れた情景描写と細やかな心情描写が、時間を忘れて物語へと没入させてくれる。

異種婚姻譚、貴種流離譚として文句のつけようもない構成、かつ、ヒロインたるこがねの可愛らしさと色気を余すところなく描写し切った筆力は作者の実力を示して余りある。


一片の疑いもなく商業レベルにあると断言できる、稀有な作品です。ゆっくりと時間を取って、物の怪が跋扈し、物の怪と共存する、室町の日本へどうぞ。
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