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時折再読したくなる美術史ラブロマンス

  • 投稿者: 住之江京   [2014年 09月 14日 02時 14分]
サブカル趣味の十四歳、
無邪気無教養な天使のジェニーは時空を越え、
十九世紀のパリに送り込まれた。
慣れない環境、窮屈で居場所のなかったその街で、
ジェニーは気の合う友人・ウジェーヌに出逢う。
情熱に燃える画家達と、妄執に狂う天使達。
実在の人物をモデルにこれでもかと詰め込まれた人物像が、
調和し、騒ぎ、涙し、引き付けるのです。

仮に時間が愛を育てる物として、
この物語の中に流れているのは、
天使が十九世紀で過ごした20年であり、
天使と画家が出会ってからの45年であり、
画家の死から二十世紀末までの百余年で、
「ヘッドドレスを外す」のに費やしたほんの十数分で、
物語の執筆に要しただろうどれだけかと、
私がこの小説を読むのにかけた一晩。
そのそれぞれの時間の、それぞれの愛しさが折り重なる。
だから、ドラクロワを見る度にこの小説を読み返したくなるのです。
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