イチオシレビュー一覧

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読まずに死ねない伝奇譚

  • 投稿者: 柏輝   [2018年 02月 15日 21時 28分]
ーーさあさお立ち会い。御用とお急ぎのない方は、いやある方も、これを逃せば末代の損。錦心繍口、七歩之才、筆取る姿は今馬琴。稀代の伝奇小説家、狂枢亭交吉がその精髄、とくとご覧あれ!

時は現代ところは日本、ごく普通の高校生・高砂衛介はひょんなことから妖怪騒ぎに巻き込まれ、転がり込んできた少女と共に妖怪ハンターとして……⁉︎

大時代的な台詞回しは舞台背景によく映えて、筆者の豊富な語彙力と共に、生きた言葉を打ち立てる。
地の文は思わず口遊むような講談調、それ自体を一個の芸術と呼ぶに不足はない。

深く渦巻け陰謀論、偽史偽典こそ正史なれ。組んず解れつ怪獣決戦、思えばしなだる手弱女の肌。緻密な史料と考察、溜息の出る魅力的な人物群に裏付けられた、最強エンタメ伝奇譚、ここにあり。

花も実もある珠玉の傑作、狂枢亭交吉が『アサルト・オン・ヤオヨロズ』、読まずに死ぬのは、ちと勿体無い。

語れ――猥雑に、粗雑に。伝奇はいま、新たな語り手を得て新生する

  • 投稿者: 退会済み   [2017年 03月 30日 18時 10分]
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本作の魅力はなんと言っても主人公の古風な語り口。古文めいた古めかしい語りでありながら不思議と読みやすいのです。現代日本を舞台にした伝奇バトルの世界を、独特な文体で語ることで魅力が何倍にもアップしています。

主人公たちが退治しなければならないのはさまざまな妖怪変化なのですが、ひとつひとつ作者さんが調べ上げていることがうかがえるのも好印象。ぜひ、その怪異っぷりをご堪能ください。

魅力と言えば、ヒロインたちのかわいさも光っています。私が特に好きなのは、若い女の子なのに「~のじゃ」としゃべる卜部凛です。作者さんの、のじゃ口調への愛がいっぱい感じられますね。もちろん、他の子もかわいいです。ファンアートがたくさんありますから、ぜひ見てください。

ではでは。日常と怪異が交錯する狂枢亭ワールドをお楽しみあれ!

「唸れ剣戟! 響け弓音! そして上がるなエンゲル係数!! 丹念に考証された世界観、古式ゆかしい筆致で描かれた妖怪討伐絵巻!」

「初めまして、住吉千歳といいます、高校生です
あのですね、元カレが、バイト先で知り合ったんですよ。まあ顔もよかったし?後からヨリ戻そうってしつこくって そん時会ったのが高砂衛介。中学の時の同級生です

その時はやり過ごしたんですけど、家に送ってもらった時ですよ!元カレがトカゲに変身して!もう死ぬって思った時車が来て、中で武器渡されたんですよ。長いやつ、長巻?薙刀?
なんとか撃退したーって次の日ですよ!家につけられてまた変身!やっつけたはいいんですけど、灯油かけて火点けるなんてしなきゃよかった……はあ

で、その衛介と一緒のアパートに住んでまして
同棲!?違いますよ!なんで私が大喰らいでしゃべりが落語みたいな男と……同居です同居!
ただでさえ妖怪退治しなきゃなんないのに、薄幸の美少女ってホント大変
というわけで、私がメインヒロイン張ってますアサルト・オン・ヤオヨロズ、ぜひご覧くださいー!」

硬派な男の命を懸けた戦いをとくとご覧あれ!

  • 投稿者: 退会済み   [2016年 04月 19日 08時 52分]
管理
この物語がもし映像化されるとしたら、アニメや漫画よりもむしろ、歌舞伎の舞台がふさわしいかもしれない。
現代に蘇った魑魅魍魎あいてに、ちょっと古臭い価値観の男が、ダンビラを片手に大暴れ、そんな話だからである。
主人公のエイスケはとにかくやることなすことダサイ。考え方、仕草、まったくもって今風ではない。不器用を絵に描いたような男である。が、それがまた良い味を出している。

とかくナヨナヨしてて、女の機嫌ばかりうかがう頼りない男がもてはやされる昨今。

こんな硬派なキャラも時にはいいだろうと思う。

時は現代、旧き魑魅魍魎跋扈する怪異の脅威

  • 投稿者: 室木 柴   [2016年 02月 23日 11時 25分]
 主人公:高砂衛介は思春期真っ盛りの普通の男子。しかしここぞで江戸っ子を思わせる、粋で、己の矜持を高く掲げる漢でもある。
 イマドキでナマイキ(しかし実は結構家庭的)な美少女:住吉が見つけた勾玉を起因に、太古の匂い香る常世の怪異が現世へと浸食し始める。
 さながら文明で練り上げた分厚い壁に入った小さなひびに、太い釘を打ちこんでいくかのように物語は進む。
 与えられた武器は超常の力、されど強大な力に非ず。衛介、如何する?

 語り口は近代文学を思わせる堅めの文体だが、読みづらいかといえば否。何よりもこの文章だからこそ豊かな民俗学の知識と怪奇共が引き立つ。
『本当にいそうな思考回路の、溌剌として活き活きとした登場人物と、和の息吹濃き現代ファンタジー』
 上記の要素が好きな方・興味のある方は、新たな扉への挑戦としても、是非この作品--「アサルト・オン・ヤオヨロズ」を読んでみてはいかがだろうか?

あやかしの 正体見たり おおとかげ

  • 投稿者: 173   [2015年 10月 14日 04時 13分]
 世の中には、絵心の無きゆえに原稿用紙を開く者が居る。
 こうして御話しさせて頂いている男は、正に其の類である。

 しかし本作は明確に違う。恐らく小説と言う様態でこそ、其の魅力を存分に発揮するものであろう。
 韻と律を意識した言葉選びは、古文さながらとでも言うべきか。読んでいて心地良い。「文章を読むこと」其のものを楽しく思えるのは、中々如何して貴重なように思う。
 やや難読の熟語こそ多いものの、字義と文脈で大体は理解できる。勿論、辞書を引くも良し。此れもまた「古文的」な楽しみ――とは幾らか阿った評価になろうか。

 魅力的な登場人物。斬新な世界観。白熱の戦闘。躍動の活劇。此れらを綴る軽妙な語り口。
 此の小説が面白いと言うに足る全てを備えている。

 読めば魑魅魍魎を招くやも。
 けれど高砂くんと愉快な仲間たちが居れば大丈夫。

 いざやゆるゆる、御楽しみあれ――
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