イチオシレビュー一覧

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色ならばぎんのあお、音ならば甲高い鈴、味はハッカのような。

  • 投稿者: 茶屋ノ壽   [2019年 02月 17日 06時 54分]
 酔わせるような恐怖小説。耽美というには良い意味で歪んでいるけれども友情やら親愛の情やらに当てはめようとするとどこか胸がざわめくような、不確定な心情がノイズのように脳の裏表をかき乱す感触が得られます。不思議を感じたい、そのような欲求がある方にお勧めする、お話です。

 19世紀あたりの日本的な香り、書生と少年が作り出した乳白色なゆりかご、そこに確かにあった何か大切で切実な停滞、同時に存在する狂気。純粋に欲するものをまっすぐに歪ませる。そのような物語を好む人たちにお勧めしたいお話でもあります。

 一瞬の幻視へたどり着く、その場面を描きたいために書かれた言葉の渦、それは淡々と執念を積み重ねるような作者の鮮やかな情念に、心揺さぶられると良いのではないだろうかと思う次第、ゆえに我らが同族にお勧め致したい。
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