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優しくて臆病な熊さんと、気ままで逞しい狼さんの、やさしい出会いの物語

高校を卒業してからずっと、バイトをかけもちして家族三人の生活を支えてきた大神さん。そんな彼女の新しいバイト先は、とある会社の倉庫管理のお手伝い。
初日にひとりで職場にやって来た大神さんを出迎えた倉庫主任の冴木さんは、がっしりとした長身に顔中もじゃもじゃの髭に覆われた、熊みたいな男の人だった。

人に頼ることなく逞しく生きてきた、ちょっと能天気で直情径行な大神さんと、人を傷つけることが怖くて内に篭もりがちの、優しくて臆病な冴木さん。
あまり他人と深く関わることなく生きてきたふたりだけれど、狼さんが気になってそろそろと森から顔を出す熊さんと、それが気になってついつい見守ってしまう狼さんの、ちょっとずつ心と心で寄り添っていくような関係性に、ぽかぽかと心があたたかくなる。

忙しい日々のふとした余白の時間、一息ついて「ああ幸せだな」って言ってみたくなるような、幸福な陽だまりを見つける物語。

明確に好きと形にしない恋の形

  • 投稿者: 花ゆき   [2014年 05月 27日 19時 05分]
あらすじは、引用させていただきますが「強く逞しく生きる狼(23歳女・バイト)と、臆病だけど優しい熊(30歳男・倉庫主任)の、ささやかな幸せの物語」です。完結されています。

現代社会人恋愛もので、甘すぎず、ほわっとした読了感があります。淡々とした大神さんが冴木さんの優しさに触れていくのですが、二人のやりとりが微笑ましいです。たくましい主人公に好感がもてます。

彼女は彼の優しさに触れていく度に、髭で見えない素顔はどうなのだろうかと考えます。髭で表情が分からないから彼の目で表情を読み取ろうとするんですが、彼の表情を知りたいと思う主人公に距離感が変わってきたのを感じ取れて、可愛いです。明確に好きと形にしてしまわない、そんな良さがあります。読了後には二人のその後を思い浮かべて、余韻に浸れます。オススメの小説です。
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