イチオシレビュー一覧

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在りし日の君へ。

 夏の暑い日、裕也とヒコは澄んだ水音のする川で出会う。
 キーワードは《音》
 清らかで、無垢で、残酷なまでに優しく寂しい《青》を思わせる物語。

 昔、自分も確かに経験した夏の日の暑さと感情の温度を、鮮明に思い出す事になるだろう。

 泣きたいほど戻りたいと、得たいと願った何かを、己の中に再び見付ける事になる。

 眠った感受性は起き出し、見るものを鮮やかに変えるだろう。
 文章は情景として動き、少年等の夏の感情に引き摺られ磨かれる。

 情景が息づき、鮮烈な感情に瞠目する。

 泣きたくて、仕方無くなる。

 そんな物語だから、薦めるよ。
 君の心に眠る幼い自分を、もう一度起こしてみるといい。

 目に写る世界が、きっと変わる筈だから。


泡沫が弾ける様に心を打つ

僕とヒコの物語。

導入部の和歌にいきなり持ってかれます。


そんな一文から始まる美しい日本語で綴られる
ちょっと切ない男の子の友情物語。

都会から来た僕はヒコと出会い、自然を謳歌する。
都会っ子ならではの描写もあり、実に細かく書かれてるなぁと感心しかないです。

流れる様な話の中、ヒコもまた変化します。

と、全部描きたいのですが、ネタバレが……

とにかく、最後まで読んで欲しい。
奇抜なアイデアや手法を用いなくても、これだけの物が書ける。

後半部は涙無しには読めませんでした。

蝉のなく季節が待ち遠しい。
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