イチオシレビュー一覧

▽レビューを書く

淡々とした語り口で描かれる人物が魅力

  • 投稿者: 大海一周   [2014年 08月 22日 04時 32分]
 木も土も、たべものすらも作り物。街の中には誰も入ってはいけない塔がある。誰もがそれを当然のようにふるまうのは何故なのか。誰の同意も得られない疑問を一人抱えていたエイはある日、同じ疑問を持つ少女アイと出会い、二人でバベルの中に入ることを決意する。そこに答えがあると信じて。二人が塔の中で見るものとは。


 淡々と綴られる情景の中で、生き生きとしたアイの描写が魅力的です。主人公にとって生まれてはじめてのアイという自分と疑問を同じくする存在がどれだけ鮮烈なものだったか伝わってきます。それはまるで、線画で描写される背景と人物の中、一人アイだけがカラフルな存在であるかのようです。アイから見た主人公も同じような存在であったのかもしれません。
 そんな二人が迎えるラストシーンが鮮やかな、三万字ほどの中編です。
 
↑ページトップへ