イチオシレビュー一覧

あなたは物語に何を求めるのですか？　
爽快感、闘争心、躍動感、描写……その意味するところを考えた時、作者の思想に行き着かないでしょうか？

この物語は、とても穏やかです。
しかし、そこに作者の強固な思想を感じます。
表面的な派手さはないが、心をしっとり包みこまれる心地よさがあります。
なぜなら、人と人のふれあいを優しく示しているからでしょう。

時代背景は江戸時代？主人公は富山の売薬。場面転換に七五調が有効なアクセントになっています。
それと、随所に唄われる“こきりこ節”が縁の下の力持ち。
奇をてらう話が蔓延する中にあって、読み手を選ばない構成に徹していることも大いに評価すべきと考えます。

流行に流されない意志、込められた哲学。
こういった作品こそ失いたくない文化だと思います。