イチオシレビュー一覧

　本作品に登場する人物はその悉くが狂人である。
　イカれた小鳥というタイトルに恥じない頭脳を持つ小鳥という少女が異世界に迷い込むストーリであるが、異世界側の人類もまた尋常ではない曲者ばかりである。
　しかし、読み進めるうちにただ狂っているというだけの設定ではなく各人に理由があり狂っているのだと気づけば、その異様なる世界が癖になり読み進める手が止まらなくなるだろう。
　随所に散りばめられた軽妙なパロディは凄惨たる真実を隠すためのフレーバーに過ぎず、本作品の真骨頂は滑らかなコメディの皮を被った重厚な世界観にある。
　一読して支離滅裂に見えるストーリーはその実ボーイミーツガールに始まり少女が旅の中で成長するという王道であり、主軸は一貫して主人公の成長である。
　それは小鳥という少女が今までの自分の殻を打ち破り、新たな世界へと羽ばたくまでの物語。
　つまり「イカれた小鳥と壊れた世界」なのである。