イチオシレビュー一覧

▽レビューを書く

竜の居場所、人の居場所。

  • 投稿者: 橘 塔子   [2015年 06月 15日 22時 31分]
長きに渡り、竜によって外敵から守られてきた王国バルト。養父の仇を追いながら自らのルーツを探る少年リヒトと、制御できない竜の力をその身に宿した「先祖返り」の少女イリスは、王国の陰謀に巻き込まれ、やがて伝説の実像を知ることになる。完結済。

ファンタジーの形を取ってはいるが、この作品の核にあるのはリアルな人間ドラマだ。主人公二人のみならず、ほとんどの登場人物が(敵役でさえ)過去に傷を抱えている。喪失に苦しみながら、それでも大切な人を守り、自分の居場所を求めて足掻く姿はひたむきで美しい。
シビアな展開も多いが、筆致には一貫した穏やかさを感じた。いい意味でキャラクターと距離を取った、大人の視点で描かれているからだろう。

リヒトが作りイリスが選んだ竜と人との居場所が、この先も幸せであるように。
↑ページトップへ