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解き放て、魂の告白を

  • 投稿者: 室木 柴   [2015年 07月 11日 20時 14分]
 サインスピニング。客ひきのため、看板を抱えて踊るパフォーマンス。
 だが、ここにあるのは営利というあまりにも無機質な欲望ではない。
 主人公達の叫びだ。慟哭だ。自問自答、問いかけ。そして告白。
 言葉はない。あまりにも矮小な人の身体から解き放たれる衝撃波が空気を、心を震わせ、他者を魅了する。
 空虚を抱えるアシュレ。どこまでも己を削り、そうでもしなければ届かない『どこか想いの先』を掘り出そうとするシオン。

 彼らの魂は、サインスピニングを通じて肉体から解き放たれる。あらゆる物質を貫いて、魂の芯まで手を伸ばす。
 この物語もまた、リズムのよい特徴ある文体を通じ、あなたのシンを(芯でも、心でも、真でも)躍らせる。
 これ以上、それを言葉にしようとするのは、非常に難しい。無粋ともいえる。 
 想いは形に縛られるものではないのだ。

 幸いなるかな、不幸なるかな。当作品は完結済みで中編である。
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