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未完成故の、あるいは、ナイフのような

  • 投稿者:   [2015年 04月 25日 22時 54分]
卒業を間近に控えた、四人の男女。わずか二週間の間に、それまで抱えていた胸の傷が一斉に姿を現す。それは四人の間の、微妙で絶妙な関係性に変化をもたらした。作者はこの作品を、未熟さゆえの至りと評す。しかし、それゆえに胸をえぐるものがこの世界には確かに存在する。ナイフは、とぎすぎてしまえば脆くなる。しかし、とがなければ鈍して使い物にならなくなる。その絶妙なバランスの上にこの小説は立つ。未熟さゆえの完成、この小説の持つ魅力はそこにある。青年未満の人は、すべて不完全であり、それゆえにこの小説の持つ永遠の未完成さは人の心を震わせる。
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