イチオシレビュー一覧

逃避行、そして旅という言葉に少しでも惹かれるならば、ぜひこの作品を読んでいただきたいです。

人間しか食べることのできない少年ウルフと、どんな傷であろうと回復してしまう少女シープ。
見世物にされていた二人は見世物小屋というサーカスを逃げ、広い世界へと飛び出します。

世界には様々な国があり、ちょっと不思議で、少し変わっていて、仄かに恐ろしくて、とても綺麗な所ばかり。
舌のとろけるような食べ物に舌鼓を打ち、美しい景色に心を満たす二人の旅。
旅の途中で出会う人々は二人に色んなことを教えてくれます。

人間扱いされなかった二人は、旅をすることで誰よりも人間らしくなっていきます。
化け物だった二人が幸せを探すための、不思議で怖くて美しい物語。

本棚から取り出した分厚い童話を、ロウソクの灯りの下で読むような、そんな気持ちにさせてくれるお話です。

この小説は、怪物の少年ウルフと化け物の少女シープが幸せを探す物語です。

怪物や化け物といっても、彼らはとても可愛らしく、時におちゃめに。時におしとやかな一面を見せます。

けれど幸せを探すためには、血みどろの水溜まりを歩かなければいけません。

サーカス団が全てだったウルフとシープ。赤と黒が入り交じった世界の先には、いったい何が待っているのでしょうか。

懐かしい童話と、残酷で美しい顔を見せる巧みな描写はとても素晴らしく、旅をするなかでのウルフとシープの掛け合い。景色の描写、世界観。その全てが大好きです。

この小説は美しく、残酷で、何かを気づかさせる。そんなおとぎ話。

読んだ時に衝撃を受けました。第一話から既に世界観に没入してしまい、一気に全話読んでしまいました。

世界観、ストーリー、登場人物。そのどれもが独創的で素晴らしい。そして極め付けはそれらを何段階も引き立たせる美しい文。童話のような会話のテンポに、ファンタジーのような描写。全てが一体となり、この物語を素晴らしいものに仕上げて居ます。

昔洋書ファンタジーを始めて読んだ時のような感じでしょうか。ダークだけど鬱展開ではなく、むしろ清々しいほど。

少年と少女が何処へ向かい、何の為に生きるのか。これからも目が離せません。

二人は旅に出ました。

これは探す物語です。
檻の中にいた二人は世界を知りません。
あくまで前向きに。仮にも希望に満ち満ちて。自分の世界を広げていきます。

檻の外にはいろんな人が居ました。
人には人の価値観があります。きっとみんな正しいのかもしれません。
ふと足下を見れば、血だまりが広がっていることもありますが、気にしてはいけません。

そして、これは逃げる物語です。
脚を止めることはあるのでしょうか。旅の終わりはあるのでしょうか。

二人の幸せを願って、さらに多くの人にみていただけるように、このレビューを捧げます。

一人は、「喰べる」ことで生きていける少年。
一人は、「喰べられて」も死ねない少女。

そんな二人の始まりは、逃亡でした。
けれど、彼らはその先で目的を見つけます。

それは、「幸せ」を探すこと。

出会いと別れを繰り返して、二人は旅を続けます。
辛いこともあります。楽しいこともあります。不思議なこともあります。
たくさんのことを見聞きしながら、二人は自分たちにとっての「幸せ」探しを続けるのです。

ようこそ、皆さま。
血にまみれた童話の世界へ。

これは、人を食べなければ死んでしまう少年と、肉体を傷つけられても再生してしまう少女のお話しです。
彼らは自分たちの、誇りと尊厳と愛と勇気と友情と命と心を守るため、サーカス団（魔女の家）を抜け出しまし、青い鳥を求めて血を吐きながら必死で生き抜こうとする、血まみれのヘンゼルとグレーテルです。
彼らの旅の行く末に安らぎが待っているよう心の底から願ってしまう、そんなお話しです。