又右衛門、斬ってはならぬ 〈宇都宮釣天井異聞〉

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江戸初期の宇都宮を舞台に、一人の好漢がその強さを示す

投稿者: 足軽三郎 [2017年 09月 29日 13時 08分]
 強さとは何だろう、と人は時に口にする。
 暴力、権力、財力、知力……いくつもの形をとって、強さとはあるものだ。
 私たちは己のキャラクタに沿った強さを手にし、己の意志を貫こうとする。

 荒木又右衛門、日本史上にその名を残す剣豪がこの物語の主人公だ。
 無類の剣技と類まれな忍びの術をあわせ持ち、尚且つ恵まれた体格をしている。
 すなわち、彼の強さとは暴力であり剣術となる。

 けれども、それだけではない。
 フィジカルの強さだけが彼の強さではないと、読み進めれば分かる。
 人の本当の強さとは、己の強さが封ぜられた時にこそ真の姿を見せるのだと……粛々と又右衛門の苦悩を描く文章から分かるはずなのだ。

「又右衛門、切ってはならぬ」というタイトルの意味が、その時初めて心に届く。

 山田風太郎レスペクトの色も濃い、剣術忍術入り乱れた本格歴史活劇。
 秋の夜長には、こんな物語も悪くない。
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