イチオシレビュー一覧

ある日、主人公は異世界に飛ばされますが登場人物の名前は日本語名ですので、ヨーロッパのような名前ではない事から、そこまで異世界を感じさせない感じです。
そして食文化については、あまり発達しておらず主人公が開発していくといった感じになっているのですが……あとあと、自分が異世界に与える影響について苦悩する場面があり、そこが普通に異世界転移小説とは違ったところを思わせます。
詳細は、書籍版で！　みたいな感じになってしまいますが読んでいて、今までの【小説家になろう】様の作品とは一線を画す作品作りになっているのも特徴の一つでしょう。
とてもお勧めです。

異世界転移とうまうま系飯テロな作品はそう特殊な題材ではないのですが、この作品のスゴさは五感のうち特に文章から感じにくい「嗅覚」と「聴覚」を刺激してくること。
状況説明がわかりやすいだけでなく、人の持つ体臭とか環境によって変わるその場の匂いとか、あたかもその場で嗅いでるような感覚になるのです。その上で原始的な環境で決して易々とではないのに、楽しげに料理を振る舞う主人公の、強靭で軟らかな人柄にホッとさせられます。何より彼に寄り添う無邪気で愛らしいエルフなヒロイン榛美さんの放つ癒やしオーラといったら！また、聴覚に関しては多彩なキャラクターたちの話し方の書き分けが素晴らしい。誰が話しているかすぐにわかる書き方には色々ありますが、この作中では声優の声がその都度当てられているかのようで本当に感心します。丁寧に練りこまれたお話で進行がゆっくりなのでぜひキャラクターの顔や声を想像しながら読んでみて下さい。

異世界に流れ着いた居酒屋店主が
現地にある食材を使って美味しいものを生み出していく、
美味しいものは異世界の住人の心をもゆり動かしていく、
異世界の住人とのふれあいで主人公もしだいに心を動かされていく・・・
そんな優しいお話です、いまのところ。

ファンタジーに出てくるキャラクターが何を食べて生活しているのかを考えていくとそこがどういう土地であるかがわかる、という話をかつてどこかのラノベ作家が言っておりましたが、
大商人の料理番はまさにそれ、地に足のついた、読み応えのある物語です。