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人の背中を押すのは、とても勇気の要る事だ

  • 投稿者: 鵜狩三善   [2015年 08月 22日 09時 06分]
 ある未練の為に幽霊となった篝八千代と、彼女に憑かれる形でその死の真相を探る事になる深雪壮太。
 それは始めから終わっていて、終わるところから始まっている物語。
 どうしようもなく救いようがないのに、もうとっくに救われてしまっている物語。

 真実にまつわる伏線の配置も見事だけれど、それ以上に登場人物たちの人情の機微や細かな台詞回しの描写が巧みで作品世界に惹き込まれ、その心たちに共感していく事だろう。
 そしてこんなどうしようもない事を経た後でも、代わりのないもの、かけがけのないものを亡くした世界でも、胸を張って生きていくと宣誓する主人公の姿は爽風のようで。
 是非ともこの素晴らしい読後感を味わって欲しいと思う。
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